日本レコード協会が制定したマークで識別できること、できないこと

昨日お伝えしたとおり、社団法人日本レコード協会は、レコード会社が許諾した正規の音楽配信を簡単に識別できるマークとして、エルマークというマークを運用開始したと伝えました。同時に、仮にこのマークの制定で、私的録音録画小委員会などで提案のあった「適法マーク」の役割が果たせると考えているとしたら、その考え方には大いに誤謬がある、という当協会の主張についてもお知らせしています。

Q マークがないサイトは全て違法配信サイトですか?
A このマークは、レコード会社との契約によって配信されているレコード(CD)音源や音楽ビデオなどに表示されるマークですので、それ以外のコンテンツは原則として対象となっておりません。また、レコード(CD)音源や音楽ビデオなどの配信サイトでもまだこれから対応するサイトがありますので、日本レコード協会では、このマークの利用範囲が広がるように関係者に働きかけを行なっていきます。

http://www.riaj.or.jp/shikibetsu/index.html

再掲しますが、マークの紹介ページにある上記の「よくあるご質問」は、マークの無いサイトはすべて違法配信サイトであるか否か、という問いに全く答えておらず、問答になっていません*1。さらに言えば、日本レコード協会は、この問いの前に、「このマークがあるサイトはすべて適法配信サイトなのか」という質問にこそ答えるべきなのではないでしょうか。

考えるまでもなく、日本レコード協会に関係する権利者の許諾を得ているからといって、そのサイトのすべての著作物について、適法配信であることを担保するものは何一つありません。このマークは、日本レコード協会に関係する権利という、世界中の著作者のうちごく限定された一部の権利について、その許諾を示すものでしか無いのです。もちろん、ごく限定された一部とはいえ、現在日本で商業的に流通する音楽関連コンテンツの中では大多数と言っていい割合を占めているでしょうから、このマークがあれば、そのコンテンツは「おおむね」正規の許諾を受けている、と識別できるでしょう。しかし、著作権法改正の議論において求められているのは、言うまでもなくすべての権利者の権利の保護であり、一部の権利者の保護ではありません。「おおむね」ではなく「完全に」許諾を得ていることの確認が求められる場面において、このマークの有無で識別できることは皆無に等しいと言えるでしょう。

追記

上記で指摘した点について、日本レコード協会のページに掲載されたQ&Aが修正されました。[id:illegal-site:20080426:p1]

*1:「サイト」と「コンテンツ」という射程が整理されていない、あるいは混同されているのではないのか、という指摘について「エルマーク」制度の運用を開始 - ほげげの戯言