ダウンロード違法化の動き 2007年12月18日-19日

このカテゴリーでは、違法サイトからのダウンロードを違法化する動きについて紹介します。19日から20日にかけては別に記事があります。

私的録音録画小委員会における方針の提示

2007年12月18日、文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会の2007年度第15回会合において、文化庁著作権課著作物流通推進室長の川瀬真氏から、「情を知って違法サイトからダウンロードすること」を私的複製の範囲から除外する、すなわち違法行為とする方針が示されました。なお、川瀬氏は2006年4月の第1回会合から、人事異動で交代することなく小委員会に事務局として出席しているただ一人の人物です。

小委員会の委員の一人でIT・音楽ジャーナリストの津田大介氏は、Twitterというサービスを通じて小委員会の内容を報告していました。

小委員会に対するインターネット上の反応

小委員会の方針を受けて、インターネット上でさまざまな議論が巻き起こりました。この日は、映画「シェーン」の著作権が消滅しているかどうかが争われた裁判の最高裁判決があったり、インターネットで人気のあった曲「みくみくにしてやんよ」が、作者の意に反して日本音楽著作権協会 (JASRAC) に登録されたのではないかという疑惑など、著作権に関するトピックが多くありましたが、その中から本件に関係するものをピックアップすると、次のようになります。

まず、「半可思惟」では、(1)違法ダウンロードを検知する仕組みがない、(2)多数寄せられたパブリックコメントでの反対意見を検討した形跡がない*1、(3)「情を知って違法サイトからダウンロードする」ことに対して、警告してから民事訴訟を起こすというのを「情を知って」の解釈とするのは法解釈上不適当、(4)アップロードで違法サイトの取り締まりはできるのに、あえてダウンロードを違法化して国民の多くを潜在的犯罪者とするのは立法利益を考えると不利益が大きい、(5)過剰な締め付けはユーザーがコンテンツ産業から離れていってしまうことにつながり、文化の衰退につながる、という5点を挙げて、ダウンロード違法化は問題視すべきであるという指摘をしました。

ものがたり」では、「知らずに違法サイトからダウンロードした」という事態を避けるため、文化庁では法改正がなされた場合の周知徹底や、適法サイトを示すマークの普及などを提案していることについて、ユーザーが心配しているのはそんなことではなく、適法なサイトであっても違法サイトかもしれないと思ってしまうことによる、不当な競争方法が行なわれてしまうのではないかという懸念である、と指摘しています。

弁護士の小倉秀夫氏は自信のブログ「BENLI」で、審議会の決定は即法律となるのではなく、立法機関は国会であるのだから、ダウンロード違法化を阻止すべく国会議員を動かすべきだと主張し、実際に面識のある国会議員を通じて政党に働きかけようとしています。また、小委員会で川瀬氏が「ユーザーが著しく不安定な状況に置かれることはない」と発言したことに関連して、「ダウンロードが違法とされれば、民事訴訟における証拠保存手続きとして、自身のハードディスクの内容すべてを権利者に複写されるかもしれない、として、川瀬氏の楽観視に疑問を呈しています。

国会議員の川内博史氏は、自身のブログで、これは「「ユーチューブ」動画保存違法化法案」とでも言うべきもので、闘わなければならない、との見解を示しました。

パブリックコメント提出時から、ダウンロード違法化に反対してきたインターネット先進ユーザーの会(MiAU)は、今回の提案方針について緊急メッセージを発表しました。また、発起人の一人である小寺信良氏は、法人化もされていない団体の意見など考慮に値しないというのなら、きっちりと法人登記する、として、MiAUの早期の法人化を示唆しました。

「違法サイト」を認定する動き

このような中、ダウンロード違法化後のインターネット利用のあり方としては、違法サイトを認定してそれを広くユーザーに知らしめるべきだとして、任意団体日本違法サイト協会が設立され、第1号の違法サイトとして文化庁を認定しました。

また、しっぽのブログでは、定義に基づき違法サイトからのダウンロードを違法としたときにどのサイトが違法サイトになるかについての考察がなされました。

以上がダウンロード違法化の動きに関する2007年12月18日から19日にかけての動きでした。なお、インターネット上には本件に関する意見がブログを中心として数千の単位で存在しましたが、すべてを紹介することは不可能なため、一部を紹介するにとどめました。ご了承ください。

なお、上記の紹介のしかたからは、当協会がダウンロード違法化について反対の立場を取っているかのように受け取られるかもしれませんが、当協会はあくまで将来的に「情を知って違法サイトからダウンロードすること」が違法になったときに違法サイトを認定することを目的としており、ダウンロード違法化の是非については現時点で積極的な賛否を表明していないことをお知らせします。

*1:パブリックコメントが議論に生かされていないとする憤りは、ほかにhttp://www.himajin.jp/mt/ei/2007/12/post_318.htmlなど。